これしきのことで 2

(続き)
 
 
パパにも親友達の前で私は涙ながらに約束させた
 
「ほんまに5年やな?」
「ほんまに5年我慢したらいいんやな?」
「そしたら大手の時とまではいかんでも家買う貯金とかできるんやな?」
「じゃ皆の前で約束して」
「嘘つかへんて」
「ついてきてくださいって言うて!」
 
離婚も奈良のパパ実家には考えてることも話した
 
でも鬱でそんなパワーもなかった
 
結局私は5年の我慢を選択した
 
5年間パパをチクチク責めながら
 
 
5年を過ぎても給与は上がったが生活は苦しくなる一方だった
 
私はアディクションと鬱にまみれていたし、パパはパパでギャンブル三昧
 
借金もできた
 
でも、それらは自分達のしたことで我慢は当然だったから
 
パパに文句はタラタラ言ってもまだ希望はあった
 
会社が成長する
 
そしたら来年にはもう少し生活が楽かもしれないって
 
 
それがこんな事態になった
 
私は信じるしかなくて、信じてやってきたのに
 
また裏切られた
 
そんな気持ちだ
 
会長もうまい話を鼻先にぶら下げてるだけやと思ってたのに
 
自分が「信じる」「離婚しない」ということを選択したのに
 
騙しよったと思った
 
 
世間のこれだけの不景気でうちみたいな零細企業がまだあるだけでも
 
不思議なのに、私はその現実を見つめるのは怖すぎてできなかった
 
 
今、パパだって悩んでる
 
それは分かってる
 
だから責めちゃいけないのも分かってる
 
だけど苦しい
 
もう喪失するのは、これ以上失うのは耐えられない
 
 
全部私自身が経済的にパパに頼りきってきたからのこと
 
自立してこなかったからのこと
 
それでも娘がいて預けるのも費用が要るし、私は鬱だった
 
元気になってパートを探す時だって障害者ということが足かせだった
 
 

「障害なんて気にならない」
「そんな気にせんでもいいんちゃう?」
 
と簡単に言う

でも、大手にいた時だって区別があった
 
これが社会なんだと思い知らされた
 
この恐れはなかなか私の中から消えてくれない
 
 
(続く)