これしきのことで 1

「これしきのことで凹むのもどうかと思うなぁ」
 
と、ふとした瞬間は思える
 
まだパパの会社は存在してて、今のところ負債もなくて
 
会長も義母もいる
 
 
それでもパパがこの先のことで、会社をタタムことも
 
選択肢に入れていることをチラッと言ったので
 
グラグラきた
 
 
また足が地に付かない感覚に襲われる
 
車を手放すだけでなく、娘の習い事もどうなるか
 
それどころか仕事がなくなれば家のローンは払えないので
 
またしても引越しかもしれない
 
 
こうやってまだ起こってもいないことをグルグル考えてしまう
 
不安の先取りかどうかも分からないことなのに
 
 
でも、7年前のことをパパに言わずにはいれなかった
 
転職が死ぬほど嫌で親友んちでも泣いていた
 
でも、親友はパパの見方をした
 
「パパかてどうしても無理やって言うてる。やりたいこともあるって言うてる」
「くじらのすけも働くのはパパやねんからやらしてやったら」
 
とどんな言葉だったかは正確には覚えてないけど
 
こんなニュアンスのことを言った
 
ほんまに誰も私の見方をする人がいなくなって絶望した
 
 
それから会長は
「5年経ったらわしは○○に会社譲る」
「後はこいつが好きにやったらええ」
「くじらのすけちゃんも5年我慢したってくれ」
「その代わりこいつには死ぬ気でやらすから」
「ちゃんと『転職してよかった』って言わせる」
 
てなことを言われた
 
そんな口約束、信用できなかった
 
二十歳から恨んできた人たちの言うことなんか信じたくなかった
 
それにどんなことをしてでも転職は有り得ないと思ってた
 
あんな生活とまではいかなくても苦しいのは目に見えてたから
 
 
大量服薬する直前に叔父と電話をしてた
 
叔父も転職は反対してた
 
それはどう考えても生活が苦しくなるから
 
どれだけのことにお金が出て行くか
 
もらった給料はほとんど手元に残らないこと
 
数字として聞いた
 
その現実に結局耐えられなかったのだ
 
 
(続く)