アルコール依存症 〜彼の遺したメッセージ〜 4

「またクリニックでお会いしましょうね」
そういって別れた

私は退院した後も度々その人の事が気になった
今まで名乗りあったこともなかったその人が
Yさんだとはじめて知ったのもこの入院だった

退院してから今日までに1度通院した
先生やワーカーにも聞きたい衝動が沸いたが
他の患者のことは教えてもらえないかなと思いなおし聞かなかった

喫煙所で他の患者と話しているうちに
Yさんの話題になりその患者さんも見舞いに行ったと知った
自分が出会ったことなども話しお互い心配した

 
そして今日、風邪もあるし絶食で体力もなくなっている為
気休めであるが2週間ぶりに点滴を受けていた

「Y君亡くなったらしいな」
と聞こえてきた

えっ!?
と思い
思わず身を起こし

「Yさん!?」
と聞き返した

フルネームで言われたが下の名前までは知らない
(やっぱり…。)

ショックを受けていたら看護婦さんに話し掛けられた
「救急病院で一緒やったんですよ。そんなことしてたら死んでしまいますよって
言ってたのに、ほんまに…。」

一方的に言いながらまだ実感は涌いていなかった

「知ってる人が亡くなったらショックやもんねぇ」
と言われた

 
ほどなく診察室に呼ばれ先生が私の顔を見て「ん?」と怪訝そうにした
「どないした?」
「今落ち込みました…。Yさん亡くなったって…。」
「あー…。」
「救急病院で一緒やったんです。」
とその時の様子を話した
 
先生は
「長く通ってた人やから患者の中でも動揺してるヤツ多いよ」
「ほんとにねぇ。こんな仕事してたらほんまに
(あの世に)もってかれるんだな」

「いいヤツ…。というか悪いヤツでもなかったからね」
「他にも何人もみてきた」

「彼の死を聞いて落ち込むヤツと
それを自分の病気に重ね合わせて糧にしようという2通りの人間がいる」
「彼の遺した「死」という形にはなってしまったけどもメッセージを
どう受け止めるか」

そして私に向かって
「家族のためにも自分のためにもしっかり生きなあかんでぇ!」
と笑った

思い出しながら涙ぐんだ
母と重ね合わせて考えた
自分が薬物依存で死んでてもおかしくなかったとも思う

気持ちの整理をつけるためワーカーにも話した
他の患者も言っていたが管理人さんが死後発見したらしい
孤独死

病気も出会いも意味あること
神の存在を感じた