ゆで卵

いつだったか?

クリニックのコミュニティールームにいたらコンビニで買ったゆで卵をくれた人がいた

その日その人は酒臭かった

いつも仲間から
「○○来てないか?」
「あいつ迎えに行ったらなあかん」

と心配してくれる酒飲み仲間がいた

いつしか私も顔と名前を覚えた

その人が
「行こか?」

と誘われ
「いや、ほんまもうしんどいねん」

と断ってるのを見た事もある

その、ゆで卵をくれたおっちゃんが亡くなったと午後のミーティングの前に知った

あ〜…。酒止まらんようやったから…。

新聞屋さんがポストに溜まる新聞を見て変に思い発覚したそうだ

私はゆで卵を貰った時しか話した事はない

でも何というか、袖振り会うも多生の縁

そんな言葉が浮かんだ

確かにその人は私の前にいて存在していた

そして酒で亡くなった

この人の死は何を意味しているのか?

クロスのミーティングに出るようになって2年

たくさんの人の死に触れた

ミーティングがなかった時は殆ど人と話さなかったし

通院回数も少なかった

だから知らずに過ごしてきた

知らなかっただけで今までにもたくさんの人が亡くなってきたんだろう

断酒を全うして亡くなる人

酒で亡くなる人

飲まないで生きている人

飲みながら生きている人

様々だが私の周りで繰り広げられるこの人間模様にはきっと意味がある

だから私は死を忘れるのが苦手だ

その人がくれたゆで卵の入っていた白い小さなネットは今

うちの風呂場で小さくなった石鹸入れになっている

いつかそれを言ってみようかな?

そんな事を思った事もあったっけ

このアルコール依存症と言う病気には次がないとかもしれない現実をまた突き付けられた

一期一会

自分にその時必要な人と出会いや別れがある

それしか私を納得させてやる言葉が見つからない


ゆで卵をくれた方、ありがとうございました

御冥福をお祈りいたします…。