雉(キジ)の剥製 2

(続き)


それからも父との約束を思い出す度しんどかった

遊んでても、ふと思い出す

その度にお腹が冷や冷やする

母に言いたい

でもきっと嘘をついたことを怒られる

父に話してしまったこともきっと怒られる

怖かった


それでも楽になりたくて母に話したかった

でも、父との約束を破ったら父に怒られる

それも怖かった


それから1年半、隠し続けていたが

とうとう苦しさを我慢出来ず母に話した

何と切り出したか言葉は覚えてない

けれど、お腹は冷や冷やしていた

話した後、たまりかねて泣いた

母にてっきり怒られると思ったのに母は私には怒らなかった

「こんな子供に1年半もしんどい思いさせて!」
「○○(父の姓)は酷い奴や!」
「頼みこんで引き取ってもらったのに、恥かいた!」

怒られなかったことはホッとしたが、父に対する罪悪感は持った

でも私はまだ小さかったから、母が言うように父が悪いんだと思った

母は後日、お金を持ってその知り合いに謝りに行った


母は父を恨んでいた

いつも二日酔いで仕事を殆どしない父

私も幼稚園に行く時、寝間で
「お母ちゃん水」

とコップに汲んでもらい布団に座ったまま

水を飲む父を覚えている


母が言うには父はスナックで商売の話をし

外国人に騙されていたらしい

母は
「引っかかった」

と言っていた

酒を飲みながら商売の話をしてきた父を離婚後に私に話して聞かせた


母はよく殴られていた

私が
「お母ちゃんを叩くんやったら私を叩き!」

と身をていして庇った話も聞かされた


夜中の夫婦喧嘩も度々あった


離婚後、母から父は浮気をしていたことも聞いた


一流大学を出た父が11年間の結婚生活で1冊の本も読まなかったとも

聞かされた

ただ唯一、買ってきたのは釣りの雑誌だったと

「中卒の私より学がない」
裏口入学の裏口卒業や」

とも


父が酔って飲み屋から帰宅して失禁した話も聞いた

父の悪行をたくさん聞いた

父はとても嫌な奴で私も嫌いになっていった


(続く)