闇 1

私が新入社員で配属された営業所にひとつ先輩のパパはいた

第一印象

変わった人

何か話しかけてきても冗談ばかりで

しかもなかなか慣れないうちは訳が分からずなので

面白いと感じる前にただただ『変な人』


技術系のパパは技能を磨く為に全社をあげてのコンクールにも参加していた

その祝勝会の時に順番にお酌に回ったら

いきなり抱き上げられてハイジみたいにぶん回された

これだけでも変な人


その前だったかには、いきなり給湯室に現れて

「はい」

と同期もいたのに私だけに渡す

何かと思えば
「お土産」

『は!?』

である

周りに茶化されたのは言うまでもなく

なのに、だからといって食事に誘われるとかもなかった


付き合うようになってからいったいアレはなんやってんと聞けば
「あの時は可愛い子やなと思ってん」

とか

じゃ今は可愛くなくてすみませんね!てなやりとりをしたようなしないような


それからしばらく何もなかった

パパはお客さんの女の子を追いかけていたから

私も別に好きな人がいたし

あの時告白されてても引いてただけ

そもそも私は自分が惚れたらアタックするけど

惚れられたら逃げる

18、19の頃は人生で最大のモテ期だった

まぁ、それはひとつ上の先輩ばかりだったのだが

その人達にしたらひとつ下の新入社員が入ってきても

殆どが短大卒

男子は高卒が殆どなので

年下の女は私しかいなかったから血迷ったんだろう

化粧も知らず、三つ編みの青臭いガキに言い寄るのは

彼女が欲しいサカリってやつだと思う


私は遊びに誘われても他の女の子の後押しがなけりゃ

どうやって遊べばいいのかすら分からなかった

ボーリングに誘われてもカラオケに誘われても

その経験すら殆どなかったから

付き合う付き合わない以前に

女友達とすら殆ど行ったことがなかった

それもそう、私は母親のことで精一杯で

友達のように遊んだことがなかったのだ


性格はこんなだし、輩口調だしで

昔、私がヤンキーだったと思ってる人も少なくない

でもスカート丈すら短くしたこともなく

エセ優等生をやっていた


(続く)