人の目 2

(続き)


二十歳で実家を出た

お向かいの幼なじみにすら、出ることも出たことも言えなかった

母が近所に迷惑をかけるのは分かりきっていた

その面倒を放棄したのだから、批難の矛先は私に必ずくる

それも分かりきっていた

怖かった


幼なじみには手紙をもらってカミングアウト

「向かいやのに学生と社会人やからか最近会わへんなぁ?」

とあったから

結婚してハガキを出した

それがやはり仇となり、母がやったことで近所の人に捕まって

私が面倒を放棄したことをやっぱりかなり責められて

会社も休み初めて服薬する程の状態になった

それからもずっと怖かった

実家を処分する時まで、近付けないくらいに

叔父の家には車で連れてってもらっていたが

それでも見つからないか怖かった

幼なじみ達の家も引っ越して遊びに行ったが怖かった

実家を通り過ぎては行くのだが、路地の前を通るから

酒を止め始めた頃に、その隣のオバチャンがなくなって

通夜とお葬式に参列した

あれもかなりの勇気がいった

私の中では実家を出た時のまんま時間が止まっていた

でも近所の人には10年以上の月日が経っていた

当時、私を責めた人も当たり前の反応だったんだろう

迷惑かけられてたんだから

通夜と葬儀にその人は居なかった

その人も随分前に引っ越してるとは幼なじみから聞いていた

それでももしかしたら会うのではと怖かった


話は現在に戻る

今でも此処で暮らしていても、近所の目が気になる

実家の頃程には近所づきあいもない

マンション住まいってこともある

それでもこの地域はまだまだ下町色が強い

それなりに付き合いがある

娘の絡みでも勿論付き合いは増えた

そこが下町のよいところでもあるが、人の目が気になる私には怖いことでもある


人からおかしな行動と思われないか?

夜にミーティングに行くことが一番怖い

ミーティングに行くって言えないから

「何それ?」

だから

言わなくてもいいが、度々夜に子供を置いて家を出るし

不振そうに見るオバチャンもいる

別居中は子供連れて夕方、大荷物でこのマンションを出たら聞かれた

「どこ行くの?」


(続く)